◇ 教師が,授業の力を上げるために,どうればよいのでしょうか。
一番は,「先人の知恵を学ぶ」ということです。
心ある先人は,授業の要素を,きちんと残してくれていました。
これを学ぶことで,今までの智恵を得ることができます。
まさに,ニュートンの言葉にある,「私が遠くを見ることができているのだとすれば,それは巨人の方に立っていたから」と同じことです。
先人の知恵を学び,それを身につけることで,授業力は身につきます。
◇しかしながら,これには問題もあります。
それは,先人の知恵があまりに多く,その全てを調べ尽くすことは容易ではないということです。
時間も,お金も,そして手間もかかります。
現実的に,全ての智恵を調べるには,何年もかかってしまいます。
これでは,授業の力をつける前に,時だけが経ってしまったということになりかねません。
◇もう1つ問題があります。
それは,先人の知恵が,現代の教育現場に合っているかどうか,という点です。
時代背景や教育環境が違うのだから,そのままだと使えない授業の智恵もあるわけです。
そこで,誰かが,今の時代に本当に合うのかを検証しなくてはなりません。
もしも,時代や環境に合わないようなら,合うように智恵を変化させるといった作業をしなくてはいけません。
これには,文献を解釈したのち,何十年も実践して検証するといった作業が必要です。
◇ちなみに,この一連の作業のことを,難しい言葉で,「メタアナリシス」と呼びます。
文献を自分で解釈して,確かめることを指します。
実践もするのであれば,「メタアナリシス+実践」のように言えます。
◇これは,現場での実践家にしか,できない作業です。
授業に関するこの作業は,時間がかかります。
私は,軽く,10年はかかると見ていました。
◇こうして,10年ののちに,できあがったのが,
「授業成功のゴールデンルール」(明治図書」) です。
この書は,今のところ,最高のエビデンスだと言えます。
メタアナリシスを通し,
実践を通して,
今の時代に適合した,先人の知恵が入っているからです。
今のところの最善の答えだと思います。
教師全体で,共有すべき「最善の智恵」と言えます。
◇本書の活用法は,2つ考えられます。
一番は,授業の智恵を知り,それを身につけることで,授業力を上げること。
これが,本書の最大の目的です。
若いうちは,このことに本書を使ってほしいと思っています。
◇そして,ベテランに近付くにつれ,(ひょっとしたら若手でも),ここから,もう一歩進めると,次のような使い方もできます。
『本書に書かれた智恵を,さらに発展させていくこと。』
『そして,本書に書かれていない授業技術を発見すること。』
これは,実践の場で,何か1つ仕事を成し遂げたいと願う人に,やってほしいと思っています。
いずれにせよ,本書のような今までの先人の知恵を学べる,巨人の肩に乗ることができるような書は,本来なら,教員養成大学でこそ,教授すべきものだと思っています。